2012年09月02日

『緋文字』感想

ホーソーン作、八木敏雄訳『緋文字』(岩波文庫,ISBN:4-00-323041-8)を読みました。
といっても、読み終えたのは、多分、4月頃だった気がします。しばらくブログをつけていなかったので、感想を書いていませんでしたが、この作品はとても面白かったので、記事にしておこうと思います。

もっとも、『緋文字』ですが、読み始めは非常に退屈なものでした。
物語の序章として「税関」という社会風刺が収録されているのですが、これがつまらないのなんの。
この社会風刺、実に60ページにも及んでいるのですが、同時代を生きていない私には、それが的確な風刺なのか、的外れなのか、さっぱりわからないので、居酒屋で隣り合わせたよその会社のおっさんの愚痴を延々と聞かされている気分になります。

ただ、この社会風刺ですが、作者自ら「そっくり省略しても公共の損失にはならず、本にとっても命取りにはならない」と言っているくらいなので、もしも『緋文字』を手にとって、私同様、つまらないと思われた方は、迷わずに読み飛ばしてください。
物語の方はとても面白いので、「税関」で力尽きてしまってはもったいないですから。
さてさて、その肝心の物語はといいますと――。

以下、ネタバレ注意!

舞台は17世紀のボストン。
へスター・プリンという女性が、姦通罪(不倫)に問われて、処刑台に立たされるところから物語は始まります。
もっとも、この処刑台に立たされるというのは、見せしめであって、実際に処刑されてしまうわけではないようです。

処刑台の上に立たされたヘスターは、牧師たちから説教を受け、不倫相手の名前を言うように促されます。
しかし、ヘスターは相手の男を庇い、頑なに口を閉ざします。
牧師の中にアーサー・ディムズデールという若い男がいて、彼もヘスターに名前を言うように促すのですが、このディムズデール牧師がヘスターの不倫相手なのです。

ディムズデール牧師は、美声の持ち主らしく、彼の説教は聞くものの心を打つように描かれています。
敬虔な聖者ですが、人間味にも溢れ、非常に好感のもてる人物です。

結局、ヘスターはディムズデールの名前を言わず、姦通罪の罰を一人で受けることになるのですが、ディムズデールは良心の呵責から、気の病に蝕まれていきます。
そして、よそから街を訪れたロジャー・チリングワースという名医にかかることになるのですが、このロジャー・チリングワースこそがヘスター・プリンの夫なのです。

ロジャー・チリングワースはディムズデールが妻の不倫相手であると察して、復讐心から、自らの正体を隠して、ディムズデールの心をいっそう追い詰めていきます。

夫に対して不倫相手の名を秘匿する代わりに、ロジャー・チリングワースとの婚姻関係を秘匿していたヘスターは、ディムズデールの気の病が深刻になる頃、ついに彼にロジャー・チリングワースの正体を告げ、街から逃れるように言います。
この時のヘスターの言葉がとてもいいのです。

「あなたは七年間の不幸の重みにおしつぶされてしまわれたのです」
「でも、そんなものはみんな、捨てておゆきなさい! 森の小道をお歩きになるときに、そんなものに足をとられてはなりません。もし海をお渡りになるときに、そんな重荷を船に積み込んではなりません。破滅の残骸は、それが起こったところに、おいておくべきです!(中略)あなたの命をぼろぼろになるまで食いものにしてきた苦しみのもなかに、もう一日にせよ、長居する理由があるでしょうか!――その苦しみが、あなたの意志を弱らせ、行動をにぶらせているのです!――その苦しみは、あなたから悔い改める力さえ奪うでしょう! さあ、立って、お行きなさい!」

こんなに力強い言葉をかけてくれるヒロインが、ヘスターの他にいたでしょうか。
正直、あまりに感動してしまって、それまで働いていた会社を思わずやめてしまいました。

ヘスターの台詞の全文が気になった方は、ぜひ本を買って読んでみてくださいね。


posted by ちんぺい at 02:19 | Comment(2) | 読書感想文
この記事へのコメント
処刑とか死刑とか罪人の話ばかりやねw
Posted by arg at 2012年09月07日 02:13
でも、ネガ入ってるわけじゃないぞ!
Posted by ちんぺい at 2012年09月08日 15:12
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