2013年07月13日

『幽霊船 他一篇』感想

ハーマン・メルヴィル作、坂下昇訳『幽霊船 他一篇』(岩波文庫,ISBN:4-00-323085-X)を読みました。
もっとも、読み終えたのは一昨日くらいですが、記事を書いていませんでした。

ちなみに、他一篇というのは「バートルビー」という作品です。

以下、ネタバレ注意!

まず、「幽霊船」の方ですが、面白かったです。
デラーノという船長が主人公で、チリ沖を無残な姿で漂流するスペインの商船サン・ドミニーク号に出会うところから物語が開始します。
「幽霊船」というタイトルからして、私はメアリー・セレスト号のような無人の船を想像したのですが――。

乗っています。
これが怖い。そして上手い。
幽霊というのは、実在しないと突き放してしまえば、それほど怖くありません。
サン・ドミニーク号には不気味な乗客がうじゃうじゃ乗っています。

躁鬱病者のような船長のベニート・セレーノ。
黒人の従者バボー。
ホーコン(何だかわからなかったのですが、ぐぐったら船の止水に使う槙肌というものらしいです)を作っている四人の黒人。
斧を磨いている六人の黒人。
首に鉄輪を嵌められた巨人アトゥファル――。
他にもまだ出てきますが、とにかく不気味です。

こんな不気味なサン・ドミニーク号に、デラーノ船長は乗り込んで、水や食料を恵み、船を動かすための船員を貸し与えようとして、一人、留まります。
しかし、乗員たちは無秩序にふるまい、本船とを結ぶボートがなかなか来ず、凪も終わらない。
読んでいると、もうバッドエンドの香りしかしません。
これから読まれる方のために、結末は書かないでおきましょうね。

一方、「バートルビー」の方はよくわからない話でした。
何を命じても「ぼく、そうしない方がいいのですが」と言って、言うことを聞かない部下をもてあます話です。
巻末の解説を読んでみると、文学研究者にもよくわからない話らしいので、私ごときにわかるはずがありませんね。
カフカの「審判」を読んだ時のような、消化不良感を覚えたのは確かです。
ウィキペディアのハーマン・メルヴィルの主な作品(今現在の版)を見てみると「幽霊船」は挙がっておらず、「バートルビー」の方が挙がっています。
でも、どう考えても「幽霊船」の方が傑作だと私は思いました。
それとも、メルヴィルが「幽霊船」を単独では発表しなかったのかな?


posted by ちんぺい at 15:10 | Comment(0) | 読書感想文
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