2009年11月29日

蝙蝠襲来

〜「蝙蝠襲来」〜

夜。

古びた家の和室に私はいた。
いい加減色褪せた畳の上に、切れかけた電球が弱い光を落としている。見上げれば、黒ずんだ梁に黴が生えていた。
部屋はそれ程広くはなかったはずだが、四方が襖になっていて、そのどれもが開け放してあるものだから、だだ広い空間にぽつりといるようで、私はどうにも落ち着かなかった。
家の中には私の他に誰もいないのか、不気味なほど静まり返っていた。

ふいに何か軋む音がして、私は驚いて音のした方を振り向いた。
納戸の扉が勝手に開いていた。
先程まで開いていたかどうか――。或いは元々開いていて、扉が風に揺れただけなのかもしれない。
それでも、私は妙な胸騒ぎがした。
納戸の中には、モップの柄のような長い木の棒が立てかけてある。私は歩み寄ってそれを手に取った。得物を手にしたことで、幾ばくか胸騒ぎが薄らぐような気がしたのである。
家の外に何かが潜んでいる。漠然とそう感じた私は、玄関まで走り、勢いよくドアを開けた。

そして、ウッと息を呑んだ。

闇の中で、蠢く赤い目。目。目――。
夥しい数の黒い獣が、芝生の上に這いつくばり、家の周りを取り囲んでいる。
次第に闇に慣れていく目で、私は黒い獣の鉤爪のある前足に折りたたまれた翼を見た。
その外見を形容するならば、蝙蝠だ。だが、蝙蝠にしてはあまりに巨大で、犬ほどの大きさがある。
そして、何より異なっているのは、彼らが人間の頭をしていることである――。
蝙蝠たちの顔の中に、私の見知った顔が幾つかある。中学校までの同窓だった、I原、K村。すぐに思い出せたのはその二人だけだったが、どの顔にも見覚えがある。
観察を続ける内に、I原と目があった。
I原の赤い瞳に射抜かれて、私は思わず身震いをした。
牙の生えた口を歪めて笑った後で、I原はこう言った。

「あ・そ・ぼ」

I原が、翼をバサバサと舞い上がった。続いてK村。
「うわああああああああああああ」
私は、叫び声をあげながら木の棒を振り回し、二人を地面に叩き落とした。だが、蝙蝠たちは次々に襲いかかってくる。
私は家の中に逃げ込みドアの鍵を閉め、震える手にどうにか言うことを聞かせてチェーンをかけた。
そうして深く息をついた後、私は天井を仰いだ。

闇の中に、無数の赤い目が並んでいた。

深層心理に迫る!


posted by ちんぺい at 23:59 | Comment(0) | こんな夢を見た

2009年11月28日

星の船

今日の夢はちょっとSFチックでした。
目覚めた瞬間に登場人物の名前の大部分が欠落し待ったのが悔やまれます。

〜「星の船」〜

川面をゆるやかに滑る一艘の小船。
小船は、彼らの母星へと向かっていた。

小船の中には三人の男の姿があった。
一人は、初老の男。灰色の衣を纏った風体は剣客のようで、携行する一振りの剣を、片膝を立てて座り込んだ左肩の上に、斜めに立てかけて抱えていた。
残りの二人については、人と表現したのは或いは相応しくなかったかもしれない。一人は骸骨の姿をしている。初老の男と似た形の翠の衣を着込み、やはり刀剣を帯びたその姿には、不気味さはなく、むしろ気品さえ感じられた。
残りの一人は獣の姿をしている。全身を青白い炎が包んでいて、それがどういった種類の獣なのかまでは分からなかった。

三人はダロスという巨悪を滅ぼすよう、主より命を受けた。ダロスは星を一つ、そこに暮らしていた数十億の民もろとも消滅させていた。
主命を見事に果たした帰りの船の中にあっても、しかし、三人の意気は揚々としなかった。
ダロスはもともと、三人の友であり、またダロスの行いにも大義がないわけではなかったからである。
ダロスが破壊した星は、酷く汚染が進行し、外界に看過できない影響を及ぼし始めていた。汚染を完全に取り除くには、70億年という途方もない歳月が見込まれ、ダロスはこれをもはや快復不能と判断したのだ。
主の判断を仰がないままダロスは実行に移し、それが主の逆鱗に触れた。もっとも、判断を仰げば、静観せよとの命が出ていたであろうことは分かりきっていた。
彼らの主は、未来よりも、今ある命を重んじていた。

船の中で、初老の男が溜息をひとつつき、二人にこぼした。
「今回の主命を最後に、私は隊を去ろうと思う」
骸骨がそれをたしなめた。
「まだ老け込む歳ではあるまい」
「そんな歳さ」
炎獣は、すぐには言葉を発さず、静かに炎を揺らしていたが、やがて、「トウノカミ」と初老の男の名を呼んだ。
「ダロスの元へ行くつもりなのか?」
トウノカミは答えなかった。
それが答えであった。
「行かないでくれ――」
炎獣は声を震わせた。
トウノカミが死んでしまったら、炎獣はかけがえのない友を二人も殺したことになってしまう。
ダロスに止めを刺したのは炎獣であった。灼熱の炎に焼かれ、ダロスは死んだ。跡形もなく燃え尽きて消えていくダロスを送りながら、炎獣はその時も泣いていた。
炎獣は泣き虫だった。それでも、涙が流れなかったのは、すぐに炎に焙られて消えてしまうからだ。炎獣はそれがまた悲しかった。
「私達は三人もいる」とトウノカミは言った。「ダロスは今、一人なのだ――」

「トウノカミ」と、今度は骸骨が口を開いた。
「母星に帰りついたら、最後に一勝負願おう」
「む――?」
「仮に私が勝ったならば、その時は取りやめてもらいたい」
 トウノカミは少し黙った後、鋭い目つきになって、骸骨の何も無い眼孔を睨んだ。
「本気で戦って、私に勝てると思うか――?」
「或いは私は死ぬだろう。だが、それでも同じことだ。我らは三人。ダロスの元へ行けるのは一人まで。お主は生きねばならん。そうでなければ、今度は生きている者が一人ぼっちになってしまう」
「――」
 
いつのまにか、船は川面を離れ、星の海の中にあった。
「承知した」と、トウノカミは言った。
それが、勝負の申し込みへの返答だと二人が気付くまでには、少し時間がかかった。
それ程の間、船は沈黙していた。
トウノカミがどういうつもりで勝負を受けたのかはしらない。

深層心理に迫る!
posted by ちんぺい at 13:21 | Comment(0) | こんな夢を見た

2009年11月25日

離婚の真相

〜「離婚の真相」〜

教室の後ろ、書架のところに私達はいた。
クラス委員だった私は、同じくクラス委員の女子生徒と一緒に、書架の整理に当たっていた。
書架には、シリーズ本らしい何十冊もの分厚い本が雑然と置かれていた。大きさは、A5判。学会誌のような装丁で、真っ赤な表紙に、冊子名が黒い筆で一筆、行書体で記してあった。
ちょうど手に取った一冊の背表紙に書かれている号数は49だったから、それなりに歴史のある冊子らしい。
書架の整理に飽きてしまったのか、女子生徒がその中の一冊を手に取って机の上に広げると、自らも机の上、冊子の隣りに腰掛けて、ページをめくりはじめた。
女子生徒が顔を上げてはにかんだので、私も手を休めて、頭を寄せて冊子を覗き込んだ。
装丁とは裏腹に、中身は週刊誌のような内容であった。
某有名女優の離婚の真相。
そんな見出しの記事がそこにあった。
読めば、携帯電話のテンプレート機能を上手く使いこなせていないことが発端だったらしい。そんな機能が本当にあるのかはしらない。
記事によれば、某有名女優が使っていたテンプレートは、彼女の昔の恋人が作ったもので、例えばポトフのテンプレートにはウィンナーやキャベツの他、納豆が入ってしまっている。彼女の夫にはそれは受け入れられなかったが、テンプレートの作者ではない彼女は修正することができなかった。
また、某有名女優は、お気に入りだと自ら称していた高校文化祭についても、実は'08年度までの知識しか持っておらず、'09年度において旧校舎から新校舎への移設にともない、渡り鳥の卵もそちらに産み付けられるようになったが、彼女はそれを知らなかった。
こうしたことが、やがて二人の間に軋轢を生じたのだという。

今日の夢は、そんなミーハーな内容の、この一幕だけです。

深層心理に迫る!
posted by ちんぺい at 22:29 | Comment(0) | こんな夢を見た
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